
フランチャイズ加盟店の未払いが増えたとき、最初にすべきこと|ロイヤリティ・食材代の債権回収
2026.09.26
加盟店が払わない。でも店を止めると回収できない
フランチャイズ本部にとって、加盟店のロイヤリティや食材代の未払いは難しい問題です。
単なる売掛金回収ではありません。
加盟店を止めれば、売上も返済原資もなくなる。
しかし営業を続けさせれば、未収金がさらに増える。
さらに、他の加盟店への影響、ブランドイメージ、SNSでの発信、契約解除の問題まで絡んできます。
私は、このようなケースでは、
「契約解除するか、待つか」を最初に決めるべきではない
と考えます。
もっと先に確認すべきことがあります。
今日以降、未収金を増やさない仕組みに変えられるか。
まずここです。
相談事例|ロイヤリティと食材代の未払いが2,780万円
ある飲食フランチャイズ本部を想定します。
加盟法人B社は5店舗を経営しており、本部全体の売上でも無視できない存在です。
ところが、食材価格の値上げや販促施策をきっかけに本部との関係が悪化。
ロイヤリティや食材代の支払遅延が続き、未収金は約2,780万円まで増えました。
B社は、
「本部の値上げで利益が出なくなった」
「広告施策でも損害が出た」
として約900万円の損害を主張。
その金額を未払金と相殺すると言っています。
さらに、
「店を営業させてもらえれば毎月返す」
「供給を止めれば倒産する」
と本部へ訴えています。
この問題の本質は、2,780万円の回収だけではない
一見すると、
「2,780万円をどう回収するか」
という問題に見えます。
しかし私は、この問題の本質は別にあると考えます。
B社が毎月200万円返済したとしても、その一方で本部が毎月400万~500万円分の商品やサービスを後払いで提供し続ければどうなるでしょうか。
未収金は減りません。
むしろ増える可能性があります。
つまり、回収しながら新しい未払いを作っている状態です。
これでは債権回収になりません。
最初にやるべきことは「新規与信を止める」こと
私なら、まず通常の後払い条件を止めます。
ただし、いきなり全店舗の食材供給を止めるという意味ではありません。
営業を継続する合理性がある店舗については、
- 前払い
- 週次決済
- 入金確認後の出荷
- 与信限度額の設定
などに切り替えます。
重要なのは、
営業を続けても、未収金が増えない状態を作ること
です。
未収金2,780万円を一つの数字として見ない
次に、2,780万円を分解します。
例えば、
- ロイヤリティ
- 食材代
- システム利用料
- 広告分担金
です。
この中には、B社が争っていないものもあれば、金額や根拠について争っているものもあります。
私は、
争いのない債権と、争いのある債権を分ける
ことを重視します。
全部を一括して争うと、回収できるお金まで止まってしまうからです。
「900万円を相殺する」と言われても、そのまま認めない
B社は本部に対し、約900万円の損害があると主張しています。
内容は、
- 食材値上げによる損失
- 販促キャンペーンによる廃棄
- 広告費負担
- SV指導による人件費増加
などです。
ここでよくある失敗が、
「900万円と言っているなら、半分の450万円くらい譲歩して和解しよう」
という対応です。
私は先に金額を決めません。
まず、項目ごとに確認します。
食材価格の値上げは契約上認められていたのか。
キャンペーンによる廃棄数量は実際いくつだったのか。
広告費はどの契約に基づくのか。
人件費増加と本部指導には因果関係があるのか。
損害の主張があることと、その金額がそのまま債権になることは別です。
本部側に不利な事情も先に確認する
今回、本部のFC事業部長は過去に、
「ロイヤリティについて多少は相談できると思います」
と発言しています。
本部としては正式な値下げを認めていなくても、B社がこの発言を減額合意だと主張する可能性があります。
ここを無視して、
「契約書では満額だから全部払え」
と押し切るのは危険です。
私なら、発言者の権限、前後のやり取り、録音、メール、本部が減額入金をどう処理したかまで確認します。
債権回収では、相手の弱点を探すだけでは足りません。
自社に不利な証拠を先に把握することも重要です。
黒字店舗と赤字店舗を分けて考える
B社5店舗のうち、2店舗は赤字、3店舗は黒字です。
ここで、
「B社は問題加盟店だから全部解除する」
と考えるのは少し粗い。
黒字店舗は、B社の返済原資になる可能性があります。
一方で赤字店舗を残せば、毎月資金が流出します。
私なら、店舗別に、
- 売上
- 粗利
- 人件費
- 家賃
- 営業キャッシュフロー
を確認します。
短期・中期・長期を分けて考える必要があります。
短期では新規未収を止める。
中期では赤字店舗を整理する。
長期では加盟契約を継続できる相手なのかを判断する。
保証金500万円があるから安心、ではない
B社からは保証金500万円を預かっています。
これも重要な回収原資です。
ただし、すぐに未収金へ充当すればよいとは限りません。
保証金を使えば、その後の取引に対する担保的な機能はなくなります。
契約終了時に充当するのか。
営業継続中でも充当できるのか。
再度保証金を積ませるのか。
契約内容と今後の方針をセットで考える必要があります。
個人保証があるから回収できる、とも限らない
C社長には連帯保証条項があります。
しかし、
「保証人だから最後は社長個人から取れる」
と簡単には考えません。
保証の対象債務、極度額、契約更新時の書面などを確認する必要があります。
さらに、保証が有効でも、本人に資力がなければ回収できません。
保証があることと、回収可能であることは別です。
SNS炎上を恐れて支払猶予を続けるのは危険
B社は、
「供給を止めるなら本部の実態をSNSで公表する」
と発言しています。
フランチャイズ本部としては気になるでしょう。
加盟募集にも、既存加盟店にも影響する可能性があります。
しかし私は、SNS炎上を避けるために後払い供給を続けるという判断はしません。
それでは、
評判リスクを避けるために財務リスクを増やしている
ことになるからです。
必要なのは、感情的に反論することではありません。
値上げ経緯、広告費、指導記録、交渉履歴などを整理し、事実ベースで説明できる状態を作ることです。
他の加盟店への影響を忘れてはいけない
今回、他の加盟店から、
「B社は払っていないのに営業できているのか」
という声が出始めています。
これは非常に重要です。
B社だけを助けるつもりでも、他加盟店から見れば、
「払わなくても供給してもらえる」
という前例に見える可能性があります。
私は、特例を認めるなら条件を決めます。
例えば、
- 財務資料を開示する
- 当月分は前払いにする
- 過去債務を毎月返済する
- 赤字店舗を整理する
- 指定外食材を是正する
などです。
情で待つのではなく、再建条件を満たすから待つ。
この違いは大きいです。
よくある失敗|「潰したら回収できない」から何もしない
確かに、加盟店を即時解除して店舗が閉鎖すれば、回収原資を失う場合があります。
だからといって、
「倒産したら困るから供給を続ける」
という対応を無期限に続けるのも危険です。
私は、
倒産させないことと、追加与信をすることは別
だと考えます。
前払いで営業できるなら営業を続ければいい。
前払いもできないのであれば、その事業は既に本部の信用供与がなければ成り立たない状態かもしれません。
私ならこう整理します
通常の後払い供給を止める
↓
2,780万円を債権ごとに分解する
↓
900万円の相殺主張を項目ごとに確認する
↓
争いのない債務を確定する
↓
保証金・個人保証を確認する
↓
5店舗を黒字店と赤字店に分ける
↓
営業継続する店舗は前払いへ変更する
↓
赤字店舗の閉鎖・譲渡を検討する
↓
指定外食材など契約違反を是正する
↓
契約継続か解除かを判断する
実務上のチェックポイント
- 未収金2,780万円の内訳
- 各債権の支払期限
- 加盟契約上のロイヤリティ算定方法
- 食材価格変更条項
- 広告費負担条項
- 900万円の損害根拠
- ロイヤリティ減額に関する過去の発言
- 保証金の充当条件
- 個人保証の対象・極度額
- 店舗別損益
- 店舗別営業キャッシュフロー
- 毎月の新規請求額
- 返済原資
- 赤字店舗の閉店コスト
- 店舗譲渡の条件
- 指定外食材の使用状況
- 他加盟店への影響
- SNS発信内容の想定
- 今後の与信限度額
- 前払いへ変更できるか
なぜ法律だけでは解決できないのか
この問題には、相殺、契約解除、保証、フランチャイズ契約など多くの法律論があります。
しかし、法律上解除できるから即解除すればよい、という話ではありません。
解除すれば回収原資を失うかもしれない。
逆に、営業を続けさせれば未収金が膨らむかもしれない。
さらに、他加盟店への公平性やブランド統制もあります。
法律上は○○ですが、経営判断としては△△も重要です。
今回でいえば、契約違反の有無だけではなく、
債権を増やさず、返済能力を残し、FC全体の規律を守れるか
まで考える必要があります。
まとめ|2,780万円を回収する前に、3,000万円にしない
私は、フランチャイズ加盟店のロイヤリティや食材代が未払いになったとき、最初に契約解除を判断しません。
まず確認します。
未収金はいくらか。
何が争われているのか。
毎月いくら新しい債権が増えているのか。
どの店舗が返済原資を生んでいるのか。
前払いへ変えられるのか。
保証金や保証は使えるのか。
重要なのは、誰が正しいかではなく、会社を守れるかです。
2,780万円をどう回収するかより先に、2,780万円を3,000万円にしない。
私は、それがフランチャイズ本部の債権回収で最初に考えるべきことだと思います。
※本記事は、フランチャイズ加盟店のロイヤリティ未払い、食材代未払い、相殺、保証、契約解除等について、一般的な経営上の考え方を整理したものです。個別案件における法的判断を示すものではありません。実際の対応は、加盟契約の内容、未払いの経緯、店舗別収益、保証内容、当事者間のやり取りなどによって異なります。
丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。
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