悪質M&Aから会社を守る!弁護士が教えるリスク回避の完全ガイド

2026.01.26

増加する「悪質M&A」の手口と対策を弁護士が徹底解説

はじめに:増加する事業承継M&Aと潜むリスク

2026年1月20日、日本経済新聞が重要な警鐘を鳴らす記事を掲載しました。「悪質M&Aの餌食 譲渡直後に資産売られ悔やむ経営者」――事業承継M&Aが広がる一方で、会社の資産などを狙う悪質な事例も増加しているという内容です。

後継者不足に悩む経営者が、「会社と従業員を守りたい」という善意の気持ちでM&Aを選択したにもかかわらず、結果的に会社が破壊されてしまう――こんな悲劇は絶対に防がなければなりません。

本記事では、弁護士として多くのM&A案件に関わってきた経験から、悪質M&Aの実態と、それから会社を守るための具体的な方法について詳しく解説します。

事業承継M&Aの現状:光と影

M&Aは有力な事業承継の選択肢

まず大前提として、M&Aそのものは決して悪いものではありません。

M&Aのメリット:

  • 後継者不在問題の解決
  • 従業員の雇用維持
  • 創業者利益の確保
  • 買い手の経営資源による成長
  • 取引先との関係継続

適切に実行されるM&Aは、売り手・買い手・従業員すべてにメリットをもたらす素晴らしい手法です。

しかし潜むリスクも

一方で、M&Aマーケットの拡大に伴い、悪質な事例も増加しています。特に、情報や専門知識に乏しい中小企業経営者が、被害に遭いやすい傾向があります。

主なリスク:

  • 資産目当ての買収
  • 買収直後の従業員解雇
  • 取引先との関係破壊
  • 不当に安い買収価格
  • 約束違反や契約不履行

悪質M&Aの典型的な手口

実際にどのような手口が使われるのか、具体的に見ていきましょう。

手口1:資産だけを狙った買収

典型的なパターン:
不動産や設備を多く持つ企業をターゲットにし、買収後すぐに資産を売却します。その資金で買収コストを回収し、事業は縮小または廃止してしまいます。

被害例:

  • 工場の土地建物を買収直後に売却
  • 製造設備をリース会社に売却
  • 事業継続が困難になり従業員解雇

手口2:従業員の大量解雇

典型的なパターン:
「雇用は維持する」と約束して買収したものの、直後に「業績不振」を理由にリストラを敢行。人件費を大幅削減して利益を確保しようとします。

被害例:

  • 買収後3ヶ月で半数の従業員を解雇
  • 残った従業員の賃金カット
  • 労働条件の一方的な不利益変更

手口3:取引先との関係破壊

典型的なパターン:
既存の取引先との契約を一方的に見直し、不利な条件変更や取引停止を迫ります。これにより会社の信用が毀損し、売上が急減します。

手口4:不当に安い価格での買収

典型的なパターン:
売り手の焦りや情報不足につけ込み、「緊急性」を強調して冷静な判断を妨げます。適正価格より大幅に安い価格で買収し、買い手だけが大きな利益を得ます。

手口5:デューデリジェンスの悪用

典型的なパターン:
デューデリジェンス(買収監査)で詳細情報を入手した後、「重大な問題が見つかった」と虚偽の指摘を行い、大幅な価格引き下げを要求したり、ノウハウを不正に取得したりします。

悪質M&Aの「レッドフラグ」(危険信号)

悪質M&Aには、いくつかの共通する危険信号があります。これらに気づいたら要注意です。

1. 過度に急がせる

「すぐに決めないと他に買い手が」「今週中に契約を」などとプレッシャーをかけ、冷静な判断や専門家への相談を妨げようとします。
正常なM&A:数ヶ月〜1年かけて慎重に進めるのが通常です。

2. デューデリジェンスが不十分

「簡易的なDDで十分」「財務諸表だけで判断」などと言い、詳細を調査しようとしません。資産目当てなど別の意図がある可能性が高いです。

3. 買収後のビジョンが不明確

具体的な事業計画や成長戦略がなく、シナジー効果の説明も曖昧な場合、事業継続の意図がない可能性があります。

4. 従業員・取引先への配慮がない

従業員の処遇について質問しなかったり、雇用維持の確約を避けたりする場合、人員削減を前提にしている可能性があります。

5. 仲介業者の不透明性

報酬体系が不明確だったり、買い手側との関係が不透明な場合、買い手寄りの業者が売り手の利益を軽視している恐れがあります。

6. 買い手企業の実態が不明

設立間もない、事業実績が不明、財務状況を開示しない会社は、M&A目的のペーパーカンパニーや悪質な業者の可能性があります。

悪質M&Aを防ぐための5つの防御策

防御策1:信頼できるアドバイザーの起用

最も重要なのは、弁護士、税理士、公認会計士、M&Aアドバイザーなどの専門家チームを組成することです。特に実績と評判を確認し、コミュニケーションの質が高い専門家を選びましょう。

防御策2:徹底したデューデリジェンス(逆DD)

売り手側も、買い手を調査する「逆デューデリジェンス」を実施すべきです。

  • 財務健全性:過去の財務諸表、支払能力
  • 事業実績と評判:市場での評判、過去のトラブル歴
  • 経営者の人物像:理念、経歴
  • 買収後の計画:具体的な成長戦略、従業員・取引先への方針

防御策3:明確で詳細な契約書の作成

契約書は悪質M&Aを防ぐ最大の武器です。「表明保証条項」「事業継続義務条項」「雇用維持条項」などを盛り込み、違反時のペナルティを明確にします。

防御策4:段階的なプロセスと慎重な判断

初期接触からクロージングまで、推奨される期間は6ヶ月〜1年です。急がず段階的に進めることが、大切に育てた会社を守ることにつながります。

防御策5:複数の買い手候補の比較検討

一社だけと交渉するのはリスクが高いため、最低でも2〜3社と並行して交渉を進め、条件や質を比較検討しましょう。

契約書レビューの重要ポイント

弁護士による契約書レビューでは、特に以下の点に注意します。

独占交渉権条項
期間を1〜3ヶ月程度に限定し、不当な要求があれば解除できるようにします。
表明保証の範囲
売り手側の責任範囲を「知る限りにおいて」などに限定し、補償上限額を設定します。
デューデリジェンス免責
意図的な虚偽には適用されない旨を明記します。
解除条件
買い手の義務違反や経営悪化、従業員の大量解雇などがあった場合の解除権を確保します。

業種別の悪質M&Aリスク

  • 製造業:工場の土地建物、機械、技術ノウハウが狙われやすい。
  • 不動産保有企業:値上がりが期待できる土地建物が狙われやすい。
  • 小売・飲食業:好立地の店舗権利、ブランド、顧客リストが狙われやすい。

それぞれの資産に対して、売却禁止条項や事業継続義務などで対策を講じます。

もし悪質M&Aの被害に遭ってしまったら

万が一被害に遭った場合は、直ちに以下の対応を取ってください。

  1. 証拠の保全:契約書、メール、交渉記録、メモなどを整理する。
  2. 弁護士への相談:法的手段(損害賠償請求、契約解除、刑事告訴など)を検討する。
  3. 行政への報告:公正取引委員会や事業承継・引継ぎ支援センターへ相談する。

信頼できるM&Aパートナーの見極め方

信頼できる仲介業者

  • 実績と評判が確認できる
  • 報酬体系が透明(着手金、成功報酬などが明確)
  • 中立性が保たれている(利益相反がない)

信頼できる買い手企業

  • 明確なビジョンと事業計画がある
  • 従業員への配慮(雇用維持、処遇改善)がある
  • 財務が健全である
  • 過去の実績と評判が良い

まとめ:M&Aは「誰に売るか」がすべて

悪質M&Aの被害を防ぐために、最も重要なポイントは以下の通りです。

  1. 急がず、慎重に(最低6ヶ月〜1年)
  2. 専門家チームを組成する
  3. レッドフラグ(急かす、DD不足など)を見逃さない
  4. 徹底した逆DDで買い手を調査する
  5. 契約書で自衛する
  6. 複数の候補を比較する

M&Aは後継者不在企業にとって有力な選択肢ですが、「誰に売るか」がすべてを決めます。大切に育てた会社を守るため、信頼できるパートナーとともに慎重に進めてください。

M&Aをお考えの経営者の皆様、悪質M&Aから会社を守るための法的サポートをご提供します。まずはご相談ください。


参考記事
悪質M&Aの餌食 譲渡直後に資産売られ悔やむ経営者(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0637V0W5A101C2000000/

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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