運送業の経営者必読!2026年1月施行「取適法」で変わる取引ルールと実務対応の全て

2026.02.03

2026年1月1日、運送業界の取引慣行を根本から変える法律が施行されました。「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」です。長年の「業界の常識」が法的に禁止されるこの改正は、運送経営において「武器」にもなり得ます。本記事では、改正のポイントから実務対応までを徹底解説します。

【目次】

  • 1. 取適法とは?運送業界に与える歴史的インパクト
  • 2. なぜ今、法改正が行われたのか
  • 3. 運送事業者が得られる5つの具体的メリット
  • 4. 「従業員数基準」の新設が業界にもたらす影響
  • 5. 荷主に課される義務と禁止行為の全容
  • 6. 取適法違反のリスク:罰則と実務上の注意点
  • 7. 今すぐ始めるべき3つの実務対応
  • 8. よくある質問と弁護士からのアドバイス
  • 9. まとめ:取適法を「武器」に変える経営戦略

1. 取適法とは?運送業界に与える歴史的インパクト

正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、下請法を23年ぶりに抜本改正したものです。

運送業界にとっての最大の変更点は、発荷主から運送事業者への直接委託が「特定運送委託」として新たに規制対象に加わった点です。これまで曖昧だった附帯作業や支払サイトが、法的に厳格に管理されることになります。

弁護士の視点:この改正は運送業界にとって「黒船来航」に匹敵するほどのインパクトを持ちます。これまでの商慣習が通用しなくなることを前提に、経営戦略を見直す必要があります。

2. なぜ今、法改正が行われたのか

背景には、物流を止めないための構造的な課題があります。

  • 物流2024年問題への対応:労働時間規制を守るため、荷待ち時間の削減が不可欠。
  • 深刻なドライバー不足:低賃金・長時間労働の脱却。
  • コスト上昇への対応:燃料費高騰分を適正に価格転嫁できる環境整備。
  • サプライチェーンの持続可能性:荷主側にも「物流を支える責任」を明確化。

3. 運送事業者が得られる5つの具体的メリット

メリット 具体的な内容
①資金繰りの改善 配送完了から60日以内の支払いが義務化。手形払いは原則禁止。
②契約の透明化 書面・メールでの明示義務により、言った言わないのトラブルを防止。
③附帯作業の有償化 無償の荷役・検品が禁止され、正当な対価を請求可能に。
④荷待ち時間の削減 不当な荷待ちが規制対象となり、荷主側に改善を促せる。
⑤交渉力の強化 法律を根拠に、強気な価格交渉や条件変更が可能になる。

4. 「従業員数基準」の新設が業界にもたらす影響

従来の「資本金基準」に加え、新たに「従業員数基準」が導入されました。

  • 発注側(荷主):常時使用する従業員が300人超
  • 受注側(運送事業者):常時使用する従業員が300人以下

これにより、資本金が小さくても従業員が多い大規模な運送会社への委託や、逆に資本金は大きいが従業員数が少ない「特定の中小企業」も保護対象となるなど、網の目が細かくなりました。

5. 荷主に課される義務と禁止行為の全容

荷主の4つの義務

  1. 発注内容の書面明示義務
  2. 取引記録の作成・保存義務(2年間)
  3. 支払期日の設定義務(60日以内)
  4. 遅延利息の支払義務(年14.6%)

特に注意すべき禁止行為

以下の行為は、取適法で明確に禁止されています。

  • 買いたたき:コスト上昇を無視した不当に低い運賃設定。
  • 不当な経済上の利益提供:附帯作業の無償化など。
  • 協議に応じない一方的な代金決定:交渉のテーブルに着かないこと自体が違反。
  • 報復措置:通報を理由とした取引停止。

6. 取適法違反のリスク:罰則と実務上の注意点

違反した荷主には、以下のリスクが伴います。これらを理解しておくことで、交渉時の牽制になります。

  • 行政処分:勧告・指導、および社名の公表
  • 刑事罰:最大50万円の罰金。
  • レピュテーションリスク:法令違反企業としての信用失墜、求人難。

7. 今すぐ始めるべき3つの実務対応

① 既存契約の総点検

契約書があるか、支払サイトは60日以内か、附帯作業の対価は明記されているかを確認しましょう。

② 取引実態の記録化

デジタコや動態管理システムを活用し、荷待ち時間や作業内容を客観的な数値で記録に残します。

③ 価格交渉の準備

コスト上昇の具体的データを揃え、「取適法に基づいた協議」として正式に申し入れを行いましょう。

8. よくある質問と弁護士からのアドバイス

Q:荷主に通報すると報復されるのが怖いです。
A:取適法では「報復措置」そのものが厳格に禁止されています。また、公正取引委員会への相談は匿名でも可能です。まずは専門家や公的窓口へ相談し、証拠を揃えることから始めましょう。

9. まとめ:取適法を「武器」に変える経営戦略

取適法は、単なる守りの法律ではなく、攻めの経営を行うための「武器」です。適正な利益を確保し、ドライバーの待遇を改善することで、御社の持続可能な成長を実現してください。


【参考情報】
公正取引委員会 取適法相談窓口:0120-060-110
記事出典:https://logishift.net/2026/01/01/post-883/

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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