丸の内経営法律事務所

パワハラはこう防げ!効果的な予防策とその実行方法

2023.07.26

パワハラ対策はなぜ必要か

職場におけるハラスメント行為は、従業員の能力を十分に発揮することができないばかりではなく、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける行為です。このように、従業員の
方や経営者自身が加害者となってしまいかねません。
また、会社においても職場の雰囲気の悪化により業務に支障を来し、生産性が上がらないばかりか、離職が生じ常に求人に追われるような状況になってしまいます。
このような状況から、2019年にいわゆるパワハラ防止法が成立し、事業主にその対応が義務付けられました。パワハラ行為への対応は、企業の喫緊の課題といえます。

パワーハラスメントの定義

具体的にどのような行為をするとパワハラ行為として法的責任が発生するのでしょうか?

1 優越的関係を背景とした言動
業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者(以下「行為者」という)に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。

2 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者の関係性等)を総合的に考慮します。

受け手がパワハラと思ったら「パワハラ」
は間違いです。

3 労働者の就業環境が害されるもの

当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」が基準となります。

つまり、裁判例から考える、パワーハラスメントとの境界線
業務上正しいことを命令し、指導する場合であっても、
・ 感情的、高圧的(相手を上から押さえつけるような態度等)
・ 威圧的(相手を脅すような態度、言葉遣い等)
・ 攻撃的に行われた場合等
社会通念上許容される限度を超える場合には、パワーハラスメントに該当する可能性があるということです。

パワーハラスメントに該当する6つの類型

職場のパワーハラスメントに該当する行為としては、以下の6つの類型が挙げられます。

パワーハラスメントに該当する6つの類型
①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
「身体的な攻撃」とは、殴る・蹴るなどの暴行行為を指します。また、物を投げつけたがあたらなかった場合のように、身体に直接危害を加えない間接的な暴力もその対象となる可能性があります。

指導に熱が入り手を出してしまう、繰り返しミスをする部下に対し腹が立って叩くなど、指導目的であっても暴行行為をすると、業務の適正の範囲を超え、パワハラの類型である身体的な攻撃に該当する可能性が高いです。

②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
「精神的な攻撃」とは、人格を否定するような発言をするといった名誉毀損・侮辱・ひどい暴言・脅迫などの行為を指します。

大勢の前で叱責する行為、大勢を宛先に入れたメールで暴言を吐くなど他の従業員の面前で中傷するような行為、「給料泥棒」「役立たず」など人格を否定するような侮辱行為等は精神的な攻撃に該当する可能性があります。

1回でも強い打撃を与えるような精神的な攻撃があれば、パワハラに該当する可能性もありますが、暴言などを繰り返し行っていれば、パワハラに該当する可能性はより高くなります。

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
「人間関係からの切り離し」とは、自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外したり、長期間にわたり別室に隔離したり、自宅研修させたりするなどの意図的な隔離や無視を指します。

退職に追い込むために、配転命令を出すこと・懲罰的な隔離をすること・孤立させることなどは、人間関係からの切り離しに該当する可能性があります。

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
「過大な要求」とは、上司が部下に対して、長期間にわたる肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での、勤務に直接関係のない作業を命ずるといった、達成困難な課題やノルマを課すなどの行為を指します。

長期にわたり他の従業員より高いノルマを課すなどの過大な業務・ノルマの強制、業務上の必要がない業務を行う命令は、過大な要求に該当する可能性があります。

⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと)
「過小な要求」とは、管理職である部下を退職させるため、その上司が誰でも遂行可能な業務を行わせるといった、客観的に見て過小な役割、生産性のない仕事を振るなどの行為を指します。

管理職に対して、退職させるために受付窓口業務に配置転換するなどの恣意的な降格や、合理的な理由もなく自宅待機を命じる行為、「もう仕事はするな」と言い放置する行為などは、過小な要求に該当する可能性があります。

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
「個の侵害」とは、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視する、他の従業員に接触しないよう働きかける、私物の写真撮影をするといった、私的な生活・プライバシーに過剰に立ち入る行為を指します。

特定の思想・信条であることを理由とした監視などの嫌がらせや、交際関係などのプライバシーを過度に詮索したり口出ししたりするといったプライバシーへの過剰な立ち入りは、個の侵害に該当する可能性があります。

パワハラをしたらどんな責任が発生するのでしょうか?

では、パワハラが起きた場合、個人、法人にどのような責任が発生するのでしょうか。
《 個人 》
1 刑法
第204条(傷害) 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
第208条(暴行) 2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
第222条(脅迫) 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
第230条(名誉毀損) 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
第231条(侮辱) 拘留又は科料
第223条(強要) 3年以下の懲役
2 民事責任
民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これ
によって生じた損害を賠償する責任を負う。
3 その他の責任
就業規則により懲戒処分の対象となる
法的責任は個人に留まらず、会社にも及びます。

《 会社 》
1 民事上の責任
・民法第415条・労働契約法第5条(職場環境配慮義務違反)
職場環境を整えなかった責任
・民法第715条(使用者責任)
雇用主としての責任
2 社会通念上の責任
ブランディング力の低下
求人における応募者の減少
社内における生産性低下
パワハラ行為の法的責任

対策の方法論

では、パワハラ対策をするためにどのようなことをしたらよいでしょうか。
パワハラ防止法において相談窓口の設置が義務付けられています。

1外部相談窓口
法律事務所などの専門家に委任する場合です。
2内部相談窓口
社内に設置する場合です。

内部相談窓口のフロー
ア通報者から相談窓口に相談
イ事実関係の確認
通報者からの聞き取り
目撃者からの聞き取り
行為者からの聞き取り
⇒通報のあった事実の有無を確認する
ウ行為者・相談者への取るべき措置を検討する
エ行為者・相談者へのフォロー
オ再発防止策の検討

以上のように、パワーハラスメント対策には、専門家のサポートが必要です。
ご不明点等は弊所にご相談ください。

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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