丸の内経営法律事務所

【2026年1月施行】下請法が「取適法」に大改正!中小企業が知るべき新ルールと実務対応の完全ガイド

2026.01.26

はじめに:あなたの会社を守る新しい法律が始まります

「値上げを言い出せない…」「支払いが遅れても我慢するしかない…」

そんな悩みを抱えていませんか?2026年1月1日から、こうした状況を変える新しい法律が始まります。

これまでの「下請法」が大きく生まれ変わり、「取適法(ちゅうしょうじゅたくとりひきてきせいかほう)」という新しい名前になります。正式名称は長いので、この記事では「取適法」と呼びます。

なぜこの法改正が必要なのか?

原材料費が上がった、人件費が上がった、電気代が上がった…。でも、取引先に値上げをお願いしても断られる。こんな状況では、会社の利益が出ず、従業員の給料も上げられません。

この法律は、中小企業が正当な値上げ交渉をしやすくし、適正な利益を確保できるようにするためのものです。約20年ぶりの大改正で、皆さんの会社を守る「武器」になります。

この記事では、専門用語をできるだけ避けて、経営者の皆様が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。

1. 何が変わるの?ポイントは3つ

1-1. 呼び方が変わります:「下請」という言葉がなくなります

まず、法律の名前と使われる言葉が変わります。

これまでの呼び方 → 新しい呼び方

「下請代金」→「製造委託等代金」(依頼された仕事の代金)

「親事業者」→「委託事業者」(仕事を依頼する会社)

「下請事業者」→「中小受託事業者」(仕事を受ける中小企業)

なぜ呼び方を変えるの?

「下請」という言葉には、「上の会社」と「下の会社」という上下関係のイメージがあります。新しい法律では、発注する会社も受注する会社も対等なパートナーという考え方に変わります。

これは単なる言葉の言い換えではありません。取引関係そのものを「対等」にしていこうという、国の強い意志の表れです。

1-2. 守られる会社の範囲が広がります

これが一番重要な変更点です。

これまでは「資本金の額」だけで判断していましたが、新しい法律では「資本金」か「従業員数」のどちらかに当てはまれば対象になります。

例:製造業の場合

【仕事を依頼する会社(委託事業者)】

資本金3億円超、または従業員300人超

【仕事を受ける会社(中小受託事業者)】

資本金3億円以下、または従業員300人以下

例:サービス業の場合

【仕事を依頼する会社(委託事業者)】

資本金5千万円超、または従業員100人超

【仕事を受ける会社(中小受託事業者)】

資本金5千万円以下、または従業員100人以下

あなたの会社は対象?簡単チェック

仕事を受ける立場(中小受託事業者)なら…

製造業:従業員300人以下なら対象になる可能性大

サービス業:従業員100人以下なら対象になる可能性大

これまで資本金が多めで保護されなかった会社も、従業員数で見ると保護される可能性があります。

1-3. 運送業も新しく対象になります

これまで製造や修理、システム開発、サービス提供などの仕事が対象でしたが、新たに「運送」の仕事も対象に加わりました。

どんな運送が対象?

自社で販売する商品や、作った製品をお客様に届ける運送業務を、運送会社に依頼するケースです。

なぜ追加されたの?

運送業界では、荷物の積み下ろしを無料でやらされたり、長時間待たされても待機料がもらえなかったりという問題が深刻でした。こうした不当な扱いを防ぐために、取適法でしっかり守ることになりました。

2. これからは違法!知っておくべき3つの禁止事項

2-1. 【最重要】値上げ交渉を拒否できなくなります

これが今回の法改正で一番大きなポイントです。

原材料費や人件費が上がったとき、「価格を見直したい」とお願いしても、取引先が「ダメです」と一方的に断ることができなくなります。

こんなケースが違法になります

❌ 「原材料費が20%上がったので、価格改定の相談をしたい」と言ったのに、「値上げの話なら聞きません」と断られる

❌ 一応、話し合いの場は設けてくれたが、こちらの説明を聞かず、「前と同じ価格でやってください」と押し付けられる

❌ 詳しい見積書を出したのに、中身を見もせず「従来通りで」と言われる

中小企業の経営者がすべきこと

値上げをお願いするときは、次の準備をしましょう:

① 具体的な数字を用意する

原材料費が何%上がったか

人件費がいくら増えたか

光熱費がどれだけ高くなったか

② きちんとした見積書を作る

材料費、人件費、経費などを項目ごとに分けて書く

以前の価格と比較できるようにする

③ 記録を残す

いつ、誰に、どんな方法で交渉を申し入れたか

相手がどう対応したか

話し合いの内容

もし断られたら?

不当に断られた場合は、その記録を残しておけば、後で相談窓口に相談できます。

2-2. 手形払いが実質的に使えなくなります

これもキャッシュフロー改善の大きなポイントです。

これまでの問題

手形で支払いを受けると、実際に現金が入るまでに時間がかかりすぎていました。

例:従来のケース

商品を納めた日:4月1日

手形をもらった日:5月30日(60日後)

手形の期日:7月29日(さらに60日後)

実際の入金:納品から120日後!

新しいルール

納品から60日以内に現金で払うことが原則になります。

つまり、手形払いは基本的に使えなくなります。

例外はあるの?

電子記録債権など、支払期日までに現金に換えられる方法なら認められる場合があります。ただし、これも60日ルールは守る必要があります。

あなたの会社への影響

プラス面:

お金が早く入ってくるので、資金繰りがラクになります。

注意点:

逆に、あなたの会社が他社に支払う立場なら、早めに現金を用意する必要があります。

2-3. 振込手数料を引かれることも違法です

意外と知られていない重要ポイント!

よくある間違い

代金を振り込むときの手数料を、受け取る側(中小企業)に負担させるケースがあります。

違法な例:

契約金額:100万円

振込手数料880円を引いて、999,120円だけ振り込む

→ これは880円の減額で違法です

正しいルール

振込手数料は、払う側(仕事を依頼した会社)が負担する

当たり前のことのように思えますが、実際には手数料を引かれているケースが多いです。

すぐにチェックしてください

入金明細を確認して、手数料が引かれていないか確認しましょう。引かれていたら、取引先に改善をお願いする根拠になります。

3. 発注する会社が守るべきルール

この法律では、仕事を依頼する会社(委託事業者)に、いくつかの義務と禁止事項が定められています。

3-1. 必ずやらなければいけない4つのこと

仕事を依頼する会社は、次の4つを守る義務があります。

① 発注内容を書面やメールで明確に伝える

口約束はダメ。以下の内容を文書やメールで伝える必要があります:

何を作ってもらうのか(仕事の内容)

いくら払うのか(代金)

いつまでに払うのか(支払期日)

どうやって払うのか(振込、現金など)

② 取引の記録を2年間保管する

契約書、発注書、納品書、請求書などを2年間保管する義務があります。パソコンのデータでもOKです。

③ 納品から60日以内に支払う

商品やサービスを受け取ってから、できるだけ早く、遅くとも60日以内に支払わなければなりません。

④ 遅れたら利息を払う

期日までに払わなかった場合、年14.6%の利息を払う義務があります。また、勝手に代金を減らした場合も、その分に利息がかかります。

3-2. やってはいけない11のこと

以下の行為は「正当な理由がない限り」禁止されています。

受け取り拒否:注文したものを受け取らない

支払い遅延:60日以内に払わない

代金の減額:後から勝手に値段を下げる

返品:受け取った後に返す(不良品なら6か月以内はOK)

買いたたき:相場より著しく安い値段で発注する

購入の強制:特定の商品や保険などの購入を強制する

報復措置:通報したことを理由に取引を止める、減らす

原材料代の早期回収:製品代金より先に材料代を払わせる

無理な協力要請:協賛金や人員派遣を無理に要求する

無償のやり直し:発注をキャンセルしたり、やり直させるのに費用を払わない

価格交渉の拒否:値上げの相談を一方的に断る(新しく追加!)

あなたの会社が発注する側なら

これらのルールを守らないと、会社が処罰される可能性があります。社内で共有しておきましょう。

あなたの会社が受注する側なら

もし取引先がこれらの違反をしていたら、我慢する必要はありません。後で説明する相談窓口に相談できます。

4. 違反したらどうなる?罰則と相談体制

4-1. 違反した会社への罰則

この法律に違反すると、以下のような処分を受けます。

① 公正取引委員会から勧告を受ける

違反内容と会社名が公表される

世間に知られることで、会社の信用が落ちる

② 国の省庁から指導を受ける

国土交通省、経済産業省などから注意される

③ 悪質な場合は罰金

最大50万円の罰金

4-2. 取り締まりが厳しくなります

今までは公正取引委員会と中小企業庁だけが取り締まっていましたが、これからは業界ごとの役所も取り締まるようになります。

例えば:

建設業なら → 国土交通省

製造業なら → 経済産業省

業界の実情をよく知る役所が関わるので、より細かくチェックされるようになります。

4-3. 通報した会社への仕返しも禁止

「この会社、違反を通報したから取引やめよう」という仕返しは完全に違法です。

もし仕返しを受けたら、公正取引委員会だけでなく、業界の役所にも通報できるようになりました。

経営者として知っておくべきこと

もし取引先が違反していたら:

通報しても身元は守られます

匿名での相談もできます

仕返しをされたら、それも違反です

もし自社が違反してしまったら:

早めに改善すれば、罰則が軽くなる可能性があります

「知らなかった」では済まされません

社内で法律を守る体制を作りましょう

5. 今すぐやるべき5つの準備

2026年1月まで時間がありません。今すぐ以下の準備を始めましょう。

5-1. まず、自社が対象かどうか確認する

チェックリスト:

製造、修理、システム開発、サービス提供、運送のいずれかの仕事をしている

取引相手の会社の方が大きい(資本金か従業員数が多い)

自社は中小企業(資本金3億円以下または従業員300人以下など)

これに当てはまるなら、あなたの会社は保護の対象です。

5-2. 契約書を見直す

今使っている契約書を引っ張り出して、以下をチェックしてください。

チェックポイント:

支払期日:「納品から60日以内」になっているか?

価格改定:「コストが上がったら協議する」という条項があるか?

振込手数料:「発注側が負担」と書いてあるか?

減額・返品:勝手にやっていいという条項はないか?

問題があれば、取引先と相談して契約書を改定しましょう。

5-3. 値上げ交渉の準備をする

今のうちに準備しておくこと:

① コストを見える化する

材料費、人件費、経費がいくらかかっているか

それぞれが最近どれくらい上がったか

エクセルで一覧表を作っておく

② 見積書のテンプレートを作る

項目ごとに分けて書けるフォーマット

前回との比較ができる形式

③ 交渉の記録フォーマットを作る

いつ、誰に、何を伝えたか

相手の反応はどうだったか

簡単にメモできる様式を作っておく

5-4. 社内で情報を共有する

この法律のことを、以下の人たちに伝えましょう:

共有すべき相手:

営業担当者

購買担当者

経理担当者

工場長や現場責任者

伝えるべき内容:

2026年1月から新しい法律が始まること

価格交渉を断られたら違法になること

おかしいと思ったら記録を残すこと

相談窓口の電話番号

5-5. 記録を残す習慣をつける

今日から記録を始めましょう:

発注書や注文書のコピーは必ず保管

価格交渉のメールは保存

電話での話も簡単にメモ

支払いが遅れたら日付を記録

不当な要求があったら詳しく記録

記録の保存方法:

紙のファイルでもOK

パソコンのフォルダでもOK

大事なのは「後で見返せる」こと

準備を後回しにしないでください

「まだ時間がある」と思っていると、あっという間に2026年1月が来ます。今日から少しずつ準備を始めましょう。

6. 困ったときの相談先

「これって違反じゃないの?」と思ったら、一人で悩まず相談しましょう。

6-1. 公正取引委員会(無料相談)

電話番号:0120-060-110(フリーダイヤル)

受付時間:10:00~17:00(土日祝日・年末年始を除く)

相談のポイント:

相談内容は取引先に絶対に知られません

匿名でも相談できます

「こんなこと相談していいのかな?」と思っても大丈夫

こんなときに相談してください:

価格交渉を断られた

支払いが遅れている

振込手数料を引かれている

不当に安い価格を要求された

通報したら取引を減らされた

6-2. 商工会議所・商工会

全国2,200か所で相談できます

お近くの商工会議所や商工会でも、この法律について相談できます。

メリット:

地元で気軽に相談できる

経営全般の相談と一緒にできる

顔の見える関係で安心

6-3. 弁護士に相談

以下のような場合は、企業法務に詳しい弁護士への相談もおすすめです。

弁護士に相談した方がいいケース:

契約書を新しく作り直したい

すでにトラブルになっている

訴訟を起こされそう

戦略的に価格交渉を進めたい

費用の目安:

初回相談:30分5,000円~(無料の場合もあります)

契約書チェック:3~10万円程度

継続的な相談:顧問契約で月3~5万円程度

まずは相談することから

「こんなこと相談していいのかな」

「証拠がないから無理かな」

「取引先との関係が悪くなるかも」

そんな心配は不要です。まずは相談してみることが大切です。

相談するときの準備:

いつ、何があったかをメモしておく

メールや書類があれば持参する

契約書があれば持参する

具体的に困っていることを整理しておく

一人で悩まず、専門家に相談しましょう。

7. この法律があなたの会社の未来を変える

7-1. 正当な値上げができるようになる

これまで:

「原材料費が上がって苦しいけど、値上げを言い出せない…」

「言っても断られるから諦めている…」

これから:

法律が味方になります。正々堂々と価格交渉ができます。

7-2. 従業員の給料を上げられる

適正な価格で仕事ができれば、会社に利益が残ります。

利益が出れば:

従業員の給料を上げられる

賞与を増やせる

設備投資ができる

会社が成長できる

これは、日本経済全体にとっても良いことです。

7-3. 対等な関係で仕事ができる

「下請」から「パートナー」へ

これまでの「お願いする立場」から、「対等なビジネスパートナー」として取引できるようになります。

対等な関係のメリット:

お互いに意見を言い合える

長期的な関係を築ける

品質向上の提案がしやすい

無理な要求が減る

7-4. 持続可能な経営ができる

短期的なコスト削減より、長期的な関係づくり

目先の安さを求めるのではなく、お互いが利益を出せる健全な関係。それが、両社の発展につながります。

経営者の皆様へ

この法律は、中小企業の皆様を守り、支援するためのものです。

「値上げを言い出しにくい」

「不当な要求を断れない」

そんな時代は終わります。

法律を味方につけて、堂々とビジネスをしていきましょう。

8. まとめ:取適法はあなたの会社の「武器」です

2026年1月1日から始まる取適法は、中小企業の経営者にとって大きなチャンスです。

この記事の重要ポイント(もう一度確認)

下請法が「取適法」に変わり、守られる会社が増える 従業員数でも判断されるようになります

値上げ交渉を断ることが違法になる 正当な理由があれば堂々と価格改定を要求できます

手形払いは実質的に使えなくなる 60日以内の現金払いが原則になります

振込手数料を引かれるのも違法 細かいことですが、これも減額として扱われます

困ったら相談できる窓口がある 公正取引委員会(0120-060-110)にいつでも相談できます

今日からできること

① 自社が対象かどうか確認する

この記事の「5-1」をもう一度読んで、チェックリストを確認してください。

② 契約書を引っ張り出してチェックする

支払条件、価格改定条項、振込手数料の記載を確認しましょう。

③ コストを整理する

材料費、人件費、経費がいくらかかっているか、一覧表を作りましょう。

④ 社内で情報を共有する

営業担当者や経理担当者に、この法律のことを伝えましょう。

⑤ 相談窓口の電話番号をメモする

0120-060-110(公正取引委員会)を、すぐ見える場所に貼っておきましょう。

最後に

「値上げを言い出しにくい」「不当な要求を断れない」

そんな状況を変えるための法律が、いよいよ始まります。

この法律を正しく理解して、積極的に活用してください。それが、あなたの会社の未来を変える第一歩になります。

中部地区の中小企業の皆様が、この法改正を機に、より公正で対等な取引関係を築き、会社を発展させていかれることを心から願っています。

分からないことがあれば、一人で悩まず、すぐに相談してください。

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参考情報

政府広報オンライン:https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9983.html

公正取引委員会:https://www.jftc.go.jp/

中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/

契約書審査、取引条件の見直し、価格協議の進め方など、取適法に関する実務対応でお困りの際は、企業法務に精通した専門家にご相談されることをお勧めします。

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キーワード

取適法、中小受託取引適正化法、下請法改正、中小企業法務、契約書審査、価格転嫁、手形払い禁止、振込手数料、価格協議、債権回収、中部地区、名古屋、企業法務、弁護士相談、公正取引委員会、2026年1月施行

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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