
【2026年10月施行予定】 カスタマーハラスメント対策の義務化 中小企業が今すぐ準備すべきこと完全ガイド
2026.01.26
顧客からのハラスメントから従業員を守ることが、企業の法的義務になります。
2026年10月、カスタマーハラスメント対策が義務化予定
2026年10月、改正労働施策総合推進法の施行が予定されおり、企業には「カスタマーハラスメント対策」が義務化されます。顧客や取引先からのハラスメント行為から従業員を守ることが、法的義務となるのです。
「お客様は神様」から「対等なパートナー」へ
「お客様は神様です」という言葉が、長らく日本のサービス業の美徳とされてきました。しかし、この考え方が行き過ぎた結果、従業員が理不尽なクレームや暴言に耐え続ける状況が生まれています。
中小企業にとって、この法改正は単なる「義務」ではなく、 優秀な人材を守り、定着させるための「チャンス」 でもあります。本記事では、カスハラ対策の実務ポイントを、わかりやすく解説します。
📋 この記事の目次
第1章 カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
1-1 法的定義と該当行為
改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントは以下のように定義されます。
「顧客等からの著しい迷惑行為により、労働者の就業環境が害されること」
具体的には、次のような行為が該当します:
- 長時間の拘束・執拗なクレームの繰り返し
- 暴言、脅迫、侮辱的な発言
- 威圧的な態度、土下座の強要
- SNSでの誹謗中傷、悪評の拡散
- セクシュアルハラスメント的な言動
- 理不尽な要求(返品・返金・値引き等)
- 従業員個人への接触強要
1-2 なぜ今、カスハラ対策が必要なのか
日本労働組合総連合会の調査(2024年)によれば、サービス業従事者の 約48%が「過去2年間にカスハラを経験した」 と回答しています。特に飲食業・小売業・宿泊業では被害率が60%を超えています。
カスハラを放置すると、以下のリスクが生じます。
| リスク項目 | 影響 |
|---|---|
| 従業員への影響 | 精神疾患の発症、離職率の上昇 |
| 職場環境 | 雰囲気悪化、生産性の低下 |
| 企業イメージ | ブランド毀損、採用難 |
| 法的リスク | 安全配慮義務違反による損害賠償責任 |
💡 ポイント
適切な対策を講じた企業では、従業員満足度が向上し、人材定着率が改善する効果が報告されています。
第2章 企業に求められる4つの対策義務
改正法では、企業に以下の4つの措置義務が課せられます。
【義務①】企業の方針の明確化と周知・啓発
就業規則への記載や、ポスター掲示、研修の実施が必要です。
第○条(カスタマーハラスメントの禁止)
会社は、顧客等からの著しい迷惑行為(暴言、脅迫、執拗なクレーム、身体的攻撃等)により、従業員の就業環境が害されることのないよう、必要な措置を講じる。従業員は、カスタマーハラスメントに該当すると思われる行為を受けた場合、速やかに上司または相談窓口に報告すること。
会社は、被害を受けた従業員のプライバシーを保護し、相談・報告を理由とした不利益取扱いを行わない。
【義務②】相談体制の整備
相談窓口を設置し、担当者を決めて研修を行います。外部の弁護士や社労士と連携できる体制構築が推奨されます。
⚠️ 実務ポイント: 相談記録は5年間保管しましょう(証拠として重要です)。
【義務③】事後の迅速かつ適切な対応
事実確認を行い、被害者を保護(配置転換や休業)します。悪質な行為者に対しては、警告、出入禁止、法的措置(被害届や告訴)を検討します。
【義務④】プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談者の個人情報を守り、相談したことを理由に降格や減給などの不利益な扱いをしてはいけません。
第3章 業種別の実務対応ポイント
3-1 小売業・飲食業
- よくある事例: レジでの暴言、長時間クレーム、SNSでの晒し行為
- 対策: レジへの録音・録画機器の設置、エスカレーション(店長→本部→弁護士)基準の明確化、「暴言はお断りします」という掲示。
3-2 IT・システム開発業
- よくある事例: 深夜休日の過度な連絡、仕様外の無償作業強要
- 対策: 契約書への業務範囲・対応時間の明記、全やり取りのログ保存、弁護士からの書面回答。
3-3 建設業・製造業
- よくある事例: 理不尽な工期短縮、支払いの先延ばし
- 対策: 個別発注書の整備、作業日報による証拠化、内容証明郵便での催告。
第4章 カスハラ対応マニュアルの作り方
4-1 対応マニュアルに盛り込むべき項目
- カスハラの定義と具体例
- 初動対応の手順(誰に報告するか)
- エスカレーション基準(警察・弁護士への連絡基準)
- 顧客への対応トーク例
4-2 実践的な対応トーク例
❌ NG対応
「申し訳ございません、すぐに対応いたします」
→ 何でも受け入れる姿勢はNGです。
✓ OK対応
「お客様のご要望は承りました。ただし、当社の規定により○○はお受けできかねます。代替案として△△をご提案させていただけますでしょうか」
⚠️ 毅然とした対応
「恐れ入りますが、お客様の言動は当社の業務に支障をきたすものと判断いたします。これ以上続く場合は、警察への相談も含めて対応させていただきます」
4-3 記録の取り方と証拠保全
カスハラ被害は 「証拠」が最重要 です。以下を記録・保管してください。
- 日時・場所・相手の氏名
- 発言内容(できる限り正確に)
- 録音・録画データ
- メール・LINE・SNSのスクリーンショット
第5章 カスハラ対策のアクションプラン
- 短期(1~3か月)
- 就業規則への条項追加、相談窓口の設置と周知、ポスター掲示。
- 中期(3~6か月)
- マニュアル作成、録音機器の導入、契約書の見直し。
- 長期(6か月~1年)
- 定期研修の実施、事例のデータベース化、HPでの方針公表。
第6章 違反時のペナルティと企業のリスク
対策を怠ると、厚生労働大臣による指導・勧告や、企業名の公表のリスクがあります。また、従業員が精神疾患を発症した場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求(例:約800万円の判決あり)を受ける可能性があります。
第7章 顧問弁護士との連携が重要な理由
カスハラ対応は法的判断の連続です。顧問弁護士がいれば、初動のアドバイス、警告書の送付、悪質なクレーマーへの訴訟対応などを迅速に行え、従業員を守ることができます。
まとめ ~「従業員を守る企業」が選ばれる時代へ
2026年10月の義務化は大きな転換点です。「お客様第一」から「従業員第一」へシフトし、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。
今すぐできる3つのアクション:
- 就業規則にカスハラ条項を追加する
- 相談窓口を設置し、従業員に周知する
- 顧問弁護士に相談し、対応マニュアルを整備する
カスタマーハラスメント対策は、企業の未来を守る投資です。貴社の実情に合わせた対策プランをご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。
参考情報
[cite_start]厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」[cite: 517]
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001292306.pdf
丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。
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