
2026年10月カスハラ対策義務化|企業が今から準備すべき5つの対応【セミナー開催報告】
2026.08.18
本日、Honorsにて、
「『カスハラ』から従業員と経営を守る 義務化直前 実務対策セミナー」
を開催しました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
今回のテーマは、2026年10月1日から企業に求められるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策です。
「カスハラという言葉は知っているけれど、具体的に何を準備すればよいのか分からない」
「お客様からのクレームとカスハラの境界線が分からない」
「悪質なお客様であっても、取引先なので強く言えない」
こうした悩みを抱えている企業は少なくありません。
今回のセミナーでは、制度の説明だけではなく、実際に会社で何を決め、現場でどう動くのかという実務を中心にお話ししました。
2026年10月1日からカスハラ対策が企業の義務に
カスタマーハラスメントへの対応は、これまで企業ごとの判断に任されている部分が少なくありませんでした。
しかし、2026年10月1日からは、企業規模や業種を問わず、事業主にカスタマーハラスメント防止のための措置が求められます。
そのため、
「問題が起きたら、そのとき対応する」
という考え方から、
「問題が起きる前に、会社として対応ルールを決めておく」
という考え方へ変えていく必要があります。
特に中小企業では、一人の社員が顧客対応を抱え込んでいるケースが少なくありません。
その社員が疲弊し、休職や退職に至ってから、経営者が初めて問題の大きさを知る。
こうした事態を防ぐことも、今回のカスハラ対策の重要な目的です。
「クレーム=カスハラ」ではありません
今回のセミナーで特に時間をかけたのが、
「正当なクレームとカスハラをどう区別するのか」
という問題です。
当然ながら、お客様から苦情を受けたからといって、すべてがカスハラになるわけではありません。
商品やサービスに問題があれば、企業として誠実に対応する必要があります。
一方で、要求自体に一定の理由があったとしても、
- 土下座を要求する
- 大声で長時間怒鳴り続ける
- 担当者個人を執拗に攻撃する
- 深夜に何度も電話やメールを送る
- SNSや口コミへの投稿を利用して脅す
- 契約内容を大きく超えた要求を続ける
といった行為については、別の問題として考える必要があります。
現場で判断するときには、
①要求の内容は契約の範囲内か
②要求の手段・態様は社会通念上相当か
③会社側にミスや説明不足などの原因がないか
という視点から整理することが重要です。
そして最も大切なのは、最終判断を現場の社員一人にさせないことです。
カスハラ対策は「クレーム対応」ではなく「経営課題」
私が今回のセミナーで特にお伝えしたかったのは、
カスハラ対策は、単なるクレーム対応ではなく経営課題である
ということです。
例えば、
「昔からあのお客様はああいう人だから」
「大口取引先なので仕方がない」
「担当者がうまく対応してくれているから大丈夫」
という状態を放置していると、問題が特定の社員に集中します。
その結果、
- 従業員の疲弊
- 休職・退職
- 採用難
- 管理職の対応時間増加
- サービス品質の低下
- SNS・口コミによる企業イメージの悪化
といった形で、経営そのものに影響が生じます。
「顧客を大切にすること」と、
「従業員にすべてを我慢させること」
は同じではありません。
会社として、
「ここまでは対応する。しかし、ここから先は会社が社員を守る」
という線をあらかじめ決めておく必要があります。
会社が準備すべき5つのカスハラ対策
セミナーでは、2026年10月1日までに企業が準備しておきたい内容を、大きく5つに整理しました。
1.カスハラに対する会社の方針を決める
まず必要なのは、
「カスハラには組織として対応し、従業員を守る」
という会社としての方針です。
経営者が方針を明確にし、従業員へ周知することがスタートになります。
2.相談窓口を決める
被害を受けた社員が、
「誰に相談すればよいのか」
を明確にしておく必要があります。
特に小規模企業では、社長本人が相談窓口になっていると、かえって相談しにくいケースがあります。
社内の別担当者や、顧問弁護士・顧問社労士など、複数の相談ルートを設けることも検討すべきです。
3.問題が発生した場合の対応フローを作る
例えば、
現場から報告
↓
記録・録音
↓
事実確認
↓
担当者の交代
↓
会社として対応
↓
必要に応じて警告・警察・弁護士へ
というように、誰が何をするのかを決めておきます。
カスハラが発生してから会議を開いて対応方法を考えるのでは遅い場合があります。
4.悪質なケースへの対応基準を決める
「何分以上続いたら上司に代わるのか」
「どのような発言があれば電話を終了してよいのか」
「いつ退去を求めるのか」
「どの段階で弁護士や警察に相談するのか」
などを事前に決めておきます。
現場の社員が一番困るのは、
「電話を切っていいのか分からない」
「帰ってもらっていいのか分からない」
という状態です。
会社が先に判断基準を与えておくことが重要です。
5.相談した社員を守る仕組みを整える
相談したことを理由に不利益な扱いをしないことや、相談者のプライバシーを守ることも重要です。
カスハラ対策は「問題のある顧客を排除する制度」ではありません。
安心して相談できる組織をつくる制度でもあります。
業種によってカスハラ対策は異なります
今回のセミナーでは、
- 建設・リフォーム
- 介護
- 小売・飲食
- 運送・物流
- クリニック・歯科医院
- 士業事務所・保険代理店
などの具体的なケースについても検討しました。
業種によって、顧客との関係性や契約内容、サービス提供義務などが異なるためです。
例えば介護・医療では、単純に
「カスハラなのでサービス提供をやめます」
とはできない場合があります。
建設業では、契約書や仕様書の内容が、顧客からの要求が正当かどうかを判断する重要な資料になります。
運送業では、一般消費者だけでなく荷主や配送先企業との関係が問題となることがあります。
つまり、インターネット上にあるカスハラ対応マニュアルをそのまま導入すればよいわけではありません。
その会社の業種、契約、顧客との関係に合わせた設計が必要です。
法務・労務・経営の3方向から整備する
カスハラ対策は、法務だけで完結するものでも、労務だけで完結するものでもありません。
例えば、
労務
- 就業規則・社内規程の改定
- 相談窓口の整備
- 従業員への周知
経営
- 現場マニュアルの作成
- 対応フローの設計
- 管理職・従業員研修
法務
- 顧客への警告書
- 出入禁止対応
- 契約解除
- SNS・口コミ対応
- 警察との連携
- 損害賠償・法的手続
といった対応が必要になります。
丸の内経営法律事務所・Tri社会保険労務士法人・Triコンサルティングでは、法務×労務×経営の3つの視点から、企業のカスハラ対策をサポートしています。
10月1日までに、まず「自社の現状確認」を
2026年10月1日まで、残された時間はそれほど多くありません。
とはいえ、最初から何十ページものマニュアルを作る必要はありません。
まずは、
「今、社員がカスハラを受けた場合、誰に相談することになっているだろう?」
と考えてみてください。
すぐに答えが出なければ、そこが最初の改善ポイントです。
そして、
- 方針
- 規程
- 相談窓口
- 対応フロー
- 現場研修
を順番に整えていけばよいと思います。
カスハラ対策の目的は、顧客と戦うことではありません。
従業員が安心して働ける環境をつくり、企業と顧客との健全な関係を守ること。
それが結果として、会社そのものを守ることにつながります。
丸の内経営法律事務所では、企業の状況や業種に合わせたカスハラ対策についてご相談をお受けしています。
「何から始めればよいか分からない」
という段階でも、お気軽にご相談ください。
丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。
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