フランチャイズ本部と対立したとき、全店脱退より先に考えるべきこと

2026.07.16

フランチャイズ本部が決めた値引きキャンペーンによって、客数は増えたのに利益が減る。

指定された食材は、市場価格より高いように見える。本部へ改善を求めても、「契約で決まっている」と取り合ってもらえない。

このような状況が続けば、経営者が「もう本部とはやっていけない。全店舗を脱退して独自ブランドに切り替えたい」と考えるのは自然です。

しかし私は、この問題の本質は、本部が正しいか、加盟店が正しいかではなく、契約を解除した後も会社が生き残れるかだと考えます。

相談事例

ある会社は、唐揚げと弁当を販売するフランチャイズ店を7店舗運営していました。

年商は約6億4,000万円ですが、食材費、人件費、電気代、デリバリー手数料の上昇により、7店舗のうち4店舗が実質赤字になっています。

そこへ本部が、主力弁当を毎週金曜日に30%値引きするキャンペーンを始めました。

客数は増えましたが、値引きの大部分は加盟店負担です。調理の負担も増え、売上が増えても粗利益は下がりました。

さらに、本部は値引き後の販売額ではなく、通常価格を基準にロイヤルティを計算しています。

社長が抗議しても、本部は「全国ブランドとして必要な施策だ」と回答しました。

指定食材についても、独自に見積りを取ると、鶏肉や油をより安く仕入れられる可能性がありました。しかし、加盟契約では本部指定業者以外からの仕入れが禁止されています。

店長の一部は、本部から離脱して独自ブランドへ移行することに賛成しています。

一方で、別の店長からは「ブランドを外せば集客できない」「本部と争う会社には残れない」という声が出ています。

会社が全店舗を独自ブランドへ変更するには、看板、包装、メニュー、システムなどで約6,000万円かかります。

中途解約の違約金について、本部の主張どおりに支払えば、1億円を超える可能性もあります。

会社の手元資金は約4,500万円です。

その一方で、赤字4店舗を現状のまま続ければ、年間約3,000万円の資金流出が見込まれています。

この問題の本質

私は、この問題の本質は、7店舗をすべて同じ結論で処理しようとしていることだと考えます。

契約の残存期間、売上、家賃、借入、店長の力量、地域でのブランド力は、店舗ごとに異なります。

それにもかかわらず、「全店で本部に残る」「全店で脱退する」という二択で考えると、判断を誤りやすくなります。

例えば、契約満了まで2年の店舗と、残存期間が6年ある店舗では、離脱コストが違います。

ブランド名で集客している店舗と、店長や立地によって顧客がついている店舗でも、独自ブランドへの移行可能性は異なります。

重要なのは、怒りに任せて会社全体の方針を決めることではありません。

店舗ごとに、継続、満了時離脱、早期閉鎖のどれが会社を守れるのかを比較することです。

よくある失敗

一つ目の失敗は、契約上の不満を理由に、全店舗の解除通知を先に出してしまうことです。

本部の施策に問題がある可能性と、加盟店が安全に離脱できるかは別の問題です。

契約解除を通知した後で、違約金、商標使用停止、食材供給停止、競業避止、物件の使用継続が問題になれば、営業そのものが止まるおそれがあります。

裁判や交渉で自社の主張が認められる可能性があっても、その結論が出るまで資金繰りや雇用を維持できるとは限りません。

二つ目の失敗は、本部との関係を恐れて、赤字店舗をそのまま維持することです。

年間3,000万円の損失が続けば、交渉の結論が出る前に会社の資金が尽きます。

三つ目の失敗は、発信力のある店長に会社の将来を委ねることです。

SNSのフォロワーが多く、地域で人気があることは重要な強みです。しかし、人気店長がいることと、仕入れ、商品開発、広告、資金繰り、人員配置を含めて独自ブランドを経営できることは別です。

私ならどう考えるか

私なら、最初に新規出店を凍結します。

既存店の収益構造が崩れている状態で店舗数を増やしても、問題は解決しません。ロイヤルティの一時的な減額と引き換えに、新たな家賃、人件費、設備投資を抱えるのは危険です。

次に、7店舗すべての損益を店舗別に作り直します。

確認するのは、現在の営業利益だけではありません。

  • このまま営業した場合の損失額
  • 契約満了までの期間
  • 中途解約違約金の想定額
  • 退去時の原状回復費
  • 店舗に対応する借入残高
  • 独自ブランドへの変更費用
  • ブランドを外した場合の売上減少
  • 店長や主要スタッフの継続意思

これらを整理した上で、各店舗を三つに分類します。

1.条件が改善すれば継続する店舗

立地や売上が良く、本部との条件交渉によって利益を回復できる店舗です。

2.契約満了まで運営して離脱する店舗

違約金を払って今すぐ辞めるより、契約満了まで営業した方が損失を抑えられる店舗です。

3.早期閉鎖を検討する店舗

営業を続ける損失が大きく、違約金や原状回復費を負担しても早く閉鎖した方が会社全体を守れる店舗です。

最善策

最善策は、赤字店舗の資金流出を止めながら、店舗ごとに撤退方法を変えることです。

本部には、感情的に「条件がひどい」と訴えるのではなく、数字を示して期限付きの条件変更を求めます。

具体的には、次のような項目です。

  • 値引き負担割合の見直し
  • ロイヤルティ算定基準の変更
  • キャンペーン参加の選択制
  • 指定食材価格の説明
  • 赤字店舗に関する違約金の減免
  • 追加出店要請の撤回
  • 契約満了店舗の円滑な離脱

同時に、本部が譲歩しなかった場合の計画も準備します。

交渉だけを続けて、結論を先送りしてはいけません。

「30日以内に回答がなければ、満了が近い2店舗は更新しない」など、期限と次の行動を決める必要があります。

なぜ法律だけでは解決できないのか

法律上は、違約金、競業避止、指定仕入れ、販売価格、契約解除などが問題になります。

しかし、契約条項が不利だからといって、直ちに無効になるわけではありません。

反対に、契約書に書いてあるからといって、本部の要求がすべて認められるとも限りません。

実際の判断には、契約締結時の説明、本部の施策の必要性、加盟店が受ける不利益、ブランド維持との関係、店舗ごとの事情が影響します。

そして、法律上争えるとしても、会社に争い続ける資金と人材がなければ、経営は持ちません。

法律上は合理的でも、資金繰りを悪化させる選択があります。

経営的には早く撤退したくても、違約金や競業避止によって営業再開が難しくなる場合もあります。

だからこそ、短期・中期・長期を分けて考える必要があります。

実務上のチェックポイント

  • 店舗ごとの契約満了日と自動更新条件
  • 中途解約違約金の計算方法
  • 一部店舗だけを解約できるか
  • 競業避止の地域、期間、対象商品
  • キャンペーン参加義務の根拠
  • 値引き時のロイヤルティ計算方法
  • 指定食材と代替品の品質差
  • 店舗別の実質原価率
  • 賃貸借契約に対する本部の関与
  • ブランド離脱後も同じ物件を使えるか
  • 看板、厨房設備、POSの所有者
  • 店長と主要スタッフの継続意思

まとめ

フランチャイズ本部との関係が悪化したとき、重要なのは、どちらが正しいかを先に決めることではありません。

重要なのは、会社を守れる順番で動くことです。

私なら、まず追加出店を止めます。

次に、赤字店舗の損失を抑えます。

その上で、7店舗を一括して判断せず、継続、満了時離脱、早期閉鎖に分けます。

そして、本部への条件変更要求には必ず期限を設けます。

怒って全店を脱退すれば、会社そのものを失う可能性があります。

反対に、関係悪化を恐れて赤字を放置しても、会社は守れません。

重要なのは、誰が正しいかではなく、会社を守れるかです。

店舗ごとの数字と契約を並べ、撤退コストと継続損失を比較する。

これが最初の一手です。


※本記事は、経営判断を考えるための架空の事例をもとに作成しています。実際の契約条件、取引関係、法的評価、財務上の影響は、個別の事実関係によって異なります。

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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