
売上は過去最高。でも、その広告は止めるべきか?|広告代理店・アフィリエイト・インフルエンサー広告のリスク
2026.11.06
【結論】
問題のある広告が見つかっても、私はマーケティング全体を一律に止めるべきだとは考えません。
まず全広告を棚卸しし、「即停止」「根拠確認まで停止」「修正して継続」に分けます。
重要なのは、売れる広告を守ることではなく、会社が「広告で顧客に何を約束しているのか」を把握できる状態を作ることです。
売上が伸びている広告でも、止めるべきことはあるのか?
成果報酬型の広告代理店を使ったところ、新規契約が急増した。
売上は過去最高。
ところが調べてみると、
- 「3か月で必ず10kg痩せる」
- 「成功率97%」
- 「医師も推奨」
- 「おすすめランキング第1位」
- 「本日23:59まで限定」
といった広告が、自社の十分な確認なしに大量に配信されていた。
こうなったとき、経営者は難しい判断を迫られます。
全部止めれば売上が落ちる。
しかし続ければ、返金、炎上、行政対応、ブランド毀損が広がるかもしれない。
私は、この問題を「広告を止めるか、続けるか」の二択にしないことが重要だと考えます。
どのようなマーケティングトラブルだったのか?
あるパーソナルジム会社では、8店舗を運営していました。
新規出店によって固定費が増え、集客強化が経営課題となっていました。
そこで成果報酬型の広告代理店と契約。
Instagram、TikTok、YouTube、アフィリエイト、インフルエンサーを使って集客を増やした結果、月180件程度だった新規契約が270件まで増えました。
数字だけを見れば、大成功です。
しかし、その裏側で広告表現が暴走していました。
「成功率97%」には、本当に97%の根拠があるのか?
広告では、
「成功率97%」
と表示されていました。
しかし実際の計算方法を調べると、
「途中退会しなかった顧客のうち、体重が少しでも減った人」
の割合でした。
10kg痩せた割合でもありません。
目標体重を達成した割合でもありません。
ここで重要なのは、数字そのものが計算上間違っているかだけではありません。
消費者が「97%」を見て何を意味すると受け取るのかです。
私は、実績数値を広告に使うなら、少なくとも、
- 何を成功と定義したのか
- 何人を対象にしたのか
- 途中退会者を含むのか
- 調査期間はいつか
- どの条件の利用者なのか
まで説明できる状態にします。
「医師も推奨」は、医師が登場すれば使えるのか?
今回、広告には「医師も推奨」という表示がありました。
しかし、その医師が実際に話したのは、運動習慣に関する一般論でした。
そのジムの3か月プログラムを検証して、
「このサービスを推奨します」
と評価したわけではありません。
私はこのような表示を使う場合、
「誰が、何を、どのように評価したのか」
を確認します。
著名人や医師の肩書きがあるから安全なのではありません。
「おすすめランキング第1位」は信用してよいのか?
さらに、A社は比較サイトで、
「2026年おすすめパーソナルジムランキング第1位」
と紹介されていました。
ところが、そのサイトを運営しているのは広告代理店の関連会社。
ランキング基準も不明でした。
私はNo.1表示やランキング広告を見るとき、次の点を確認します。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 調査主体 | 誰がランキングを作ったのか |
| 比較対象 | 何社と比較したのか |
| 調査方法 | 客観的な調査なのか |
| 評価基準 | 何をもって1位としたのか |
| 広告主との関係 | 広告代理店や関連会社が関与していないか |
「第三者サイトに書いてあるから大丈夫」とは限りません。
インフルエンサーが勝手に投稿したなら、会社に責任はないのか?
今回、インフルエンサーには30万円の報酬が支払われていました。
そのうえで、
「私はこのジムで3か月で12kg痩せました」
と投稿。
しかし実際には、有料コースを3か月受講していませんでした。
この問題は、単に「PR表記が小さかった」という話だけではありません。
そもそも体験談が事実なのかという問題があります。
インフルエンサーマーケティングを使うなら、
- 広告であることが分かるか
- 誰が投稿文を作ったか
- 報酬はあるか
- 体験内容は事実か
- 投稿後の確認を誰がするか
まで管理する必要があります。
「本日23:59まで」を毎日表示してよいのか?
今回さらに問題だったのが、
「本日23:59まで限定」
という広告です。
しかし実際には、翌日も同じ表示。
その翌日も同じ表示。
3か月以上続いていました。
これは消費者に、
「今日申し込まなければ、この条件では買えない」
という判断をさせる表示です。
私は、期間限定表示を使う場合には、
本当にその期間が終わったら条件が変わるのか
を必ず確認します。
問題広告が発覚したら、全部止めるべきなのか?
ここが経営判断として最も難しいところです。
今回、新規契約の約55%が広告代理店経由。
全部止めれば、翌月の売上が急落する可能性があります。
8店舗分の家賃や人件費は止まりません。
だから私は、広告を3つに分類します。
| 分類 | 具体例 | 対応 |
|---|---|---|
| 即停止 | 「必ず10kg」「毎日本日限定」など | 直ちに配信停止 |
| 根拠確認まで停止 | 成功率97%、医師推奨、No.1表示 | 根拠を確認してから再開判断 |
| 継続可能 | 通常の料金・店舗・サービス紹介 | 問題がなければ継続 |
危険な広告は止める。しかしマーケティング全部は止めない。
私は、この判断が現実的だと考えます。
広告代理店が勝手にやったなら、会社は悪くないのか?
ここも経営者が注意したいポイントです。
広告代理店へ外注すると、
「広告のことは代理店が管理している」
と思いがちです。
しかし実際に広告されているのは、自社の商品やサービスです。
今回は成果報酬だったため、広告代理店には、
「契約数を増やせば増やすほど収益が増える」
という強いインセンティブがありました。
それなのに、広告表現の事前承認制度がありませんでした。
私はここに構造的な問題があると考えます。
なぜ成果報酬広告は暴走しやすいのか?
成果報酬自体が悪いわけではありません。
しかしKPIが、
「契約1件いくら」
だけになると、
代理店側では、
契約を増やすことが最優先になります。
一方、会社側が負担するのは、
- 返金
- クレーム
- 解約
- 現場対応
- ブランド毀損
- スタッフ疲弊
です。
このコストが広告代理店のKPIに入っていません。
広告の評価はCPAだけでよいのか?
私は、CPAだけで広告を評価しません。
| 指標 | 確認する理由 |
|---|---|
| CPA | 集客効率 |
| 契約率 | 広告から契約への転換 |
| 返金率 | 無理な広告の可能性 |
| 初月解約率 | 期待値とのズレ |
| クレーム率 | 広告表現と現場説明の不一致 |
| LTV | 本当に良い顧客を獲得できているか |
| 店舗負担 | 現場疲弊が起きていないか |
広告費5万円で取った顧客が長く利用してくれる。
広告費2万円で取った顧客がすぐ返金要求する。
この場合、2万円の広告の方が良いとは限りません。
現場が「広告と話が違う」と言われ始めたら何が起きているのか?
今回、トレーナーから、
「マーケティング部が売るだけ売って、現場に後始末させている」
という不満が出ました。
私は、これは重大な警告だと考えます。
マーケティングが強くなりすぎると、広告がサービス提供能力を超えることがあります。
広告では、
「ほぼ確実に結果が出る」
ように見える。
現場では、
「個人差があります」
と説明する。
この差が大きくなるほど、現場は疲弊します。
私なら、どの順番で立て直すか?
全広告を一覧化する
↓
即停止・要確認・継続可能に分類する
↓
危険な広告だけを直ちに停止する
↓
広告素材・配信履歴を保存する
↓
返金・クレームを流入広告別に分析する
↓
代理店の再委託先を把握する
↓
広告表現の事前承認制度を作る
↓
インフルエンサー・アフィリエイト管理を見直す
↓
自社広告・紹介経由を増やす
↓
代理店依存55%を段階的に下げる
なぜ法律だけでは解決できないのか?
広告表現には、景品表示法、ステルスマーケティング、No.1表示などのルールがあります。
しかし、
「この文言は使えるか」
だけ確認しても、会社は立て直せません。
問題は、
- 広告代理店への依存
- 成果報酬の設計
- 社内承認体制
- 店舗との情報格差
- 返金率
- ブランド
- 集客チャネル
までつながっています。
法律上安全な広告に直すだけでなく、「広告で約束したことを現場が提供できる会社」にする必要があります。
経営者が最後に確認すべき質問は何か?
私は、このような広告・マーケティング問題では、最後にこう聞きます。
「その広告を見た顧客に、店舗スタッフが同じ説明をできますか?」
広告担当者しか説明できない表現。
広告代理店しか根拠を知らない数字。
現場が否定しなければならないキャッチコピー。
これらがあるなら、広告管理に問題があります。
広告代理店・アフィリエイト広告について、よくある質問は?
Q1.広告代理店が勝手に作った広告なら、広告主には関係ありませんか?
私は、代理店任せにはしません。自社の商品・サービスについて、どこで、誰が、どのような広告を出しているのかを把握できる管理体制を作ることが重要です。
Q2.問題広告が1つ見つかったら、全部の広告を止めるべきですか?
必ずしもそうではありません。私は「即停止」「根拠確認まで停止」「継続可能」に分けます。危険広告を止めながら、安全な集客を残します。
Q3.「成功率97%」と表示するときは何を確認すべきですか?
成功の定義、母数、対象期間、除外条件、実際の調査結果と広告から受ける印象が一致しているかを確認します。
Q4.インフルエンサーに商品を紹介してもらう場合、何に注意すべきですか?
広告であることの表示だけでなく、投稿内容が事実か、実際に体験した内容か、誰が表現を決定したかまで確認します。
Q5.ランキングサイトで1位なら、そのまま広告に使ってよいですか?
私は、調査主体、比較対象、調査方法、評価基準、広告主との関係を確認します。「ランキングサイトに書いてあった」だけでは判断しません。
Q6.売上を落とさず広告を正常化する方法はありますか?
危険広告だけを先に停止し、問題のない広告、自社広告、既存顧客からの紹介などを増やしながら、特定代理店への依存度を段階的に下げます。
まとめ|売れる広告より先に守るべきものは何か?
成果報酬型の広告代理店によって売上が急増していても、広告表現に問題が見つかれば放置するべきではありません。
ただし、すべてのマーケティングを一律停止する必要もありません。
まず全広告を棚卸しする。
危険な広告を止める。
根拠が必要な数字を確認する。
安全な広告は残す。
そして代理店・アフィリエイター・インフルエンサーを会社が把握できる仕組みに変えます。
このケースの本当の問いは、「売れる広告を止めるか」ではありません。
会社が、広告で顧客に何を約束しているのかを把握できているかです。
私は、そこからマーケティングを立て直すべきだと考えます。
※本記事は、広告代理店、アフィリエイト広告、インフルエンサーマーケティング、景品表示等に関する一般的な経営判断の考え方を整理したものです。個別広告の適法性や法的責任を示すものではありません。実際の判断は、表示内容、根拠資料、契約関係、広告主の関与、媒体、顧客への説明その他の具体的事情によって異なります。
丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。
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