「本日限り50%OFF」を毎日表示していたら?|二重価格・カウントダウン・定期購入表示の実務

2026.11.08

「本日限り50%OFF」を毎日表示していたら?EC広告で会社が最初に直すべきこと

執筆:弁護士 宮本 真志

取扱分野:マーケティング法務/景品表示法/特定商取引法/EC・通販法務/企業法務

ECサイトの「本日限り」「残り○個」は、何から見直すべきですか?

結論① 実態と明確に違う「本日限り」「残り○個」「リセットされるカウントダウン」は、売上への影響を待たず優先的に止めます。

結論② 二重価格や定期購入表示は、販売実績と最終確認画面まで確認して再設計します。

結論③ 見るべき数字はCVRだけではなく、解約率・クレーム率・LTV・ブランド毀損まで含める必要があります。

どの表示から優先して修正すべきですか?

表示 今回の実態 優先判断
本日限り ほぼ毎日同じ条件で販売 優先的に停止
残り47個 実在庫と無関係な数字 優先的に停止
20分カウントダウン 再訪すると20分に戻る 優先的に停止
95%が定期を選択 実際の定期選択率は約72% 根拠確認・修正
通常価格9,800円 その価格での販売は約3% 二重価格の根拠を精査
初回4,900円 実際に販売している 表示方法を確認
2回目以降8,800円 小さく表示 定期購入導線を再設計

今回の相談では何が起きていたのでしょうか?

ある健康食品・美容サプリメントのEC会社を想定します。

主力商品は、通常価格9,800円と表示されている美容サプリメントです。

LPには、

  • 本日限り50%OFF
  • 通常価格9,800円→初回4,900円
  • 残り47個
  • キャンペーン終了まであと20分

という表示があります。

ところが調べると、「本日限り」はほぼ毎日続いていました。

「残り47個」も実在庫ではなく、システムが表示する数字。

カウントダウンタイマーも、ページへ再訪すると20分に戻ります。

マーケティング部は、これらの施策でCVRが大きく改善したと説明します。

実際、広告経由の売上は月8,000万円を超えていました。

私は、この問題の本質は、単に「景品表示法に違反するか」ではないと考えます。

顧客を急がせるほど売上が上がるという成功体験が、会社のマーケティング判断を歪め始めていることが本当の問題です。

なぜ「本日限り」を毎日表示することが問題になるのでしょうか?

消費者が「本日限り」と表示されれば、通常は、

「今日を逃すと、この条件では買えない」

と考えます。

つまり、これは単なる装飾ではありません。

購入時期を判断する重要な情報です。

ところが実際には翌日も同じ条件。

その翌日も同じ条件。

この状態では、消費者が購入を急ぐ前提となった情報と、実際の販売条件がずれています。

私は、こうした表示については、

「売上が落ちるかどうか」より先に、「その表示を事実として説明できるか」

を確認します。

「残りわずか」「残り47個」も危険なのでしょうか?

在庫表示も同じです。

本当に在庫が47個しかないのであれば、一つの販売情報です。

しかし今回、実際には約6,000本の在庫がありました。

表示される47という数字も実在庫とは連動していません。

それでも消費者から見れば、

「今買わないと売り切れる」

という判断材料になります。

私は、こうした明確に説明できない数字は最優先で停止します。

カウントダウンタイマーは使ってはいけないのでしょうか?

カウントダウンタイマー自体が、常に使えないという話ではありません。

本当にセールが20分後に終了するのであれば、その事実を伝える意味があります。

問題は、

20分後に終わらないことです。

ページを更新したり翌日訪問したりすると、また20分に戻る。

この場合、タイマーが伝えている緊急性と実際の販売条件が一致していません。

「急がせるための演出」と「本当の期限表示」は分ける必要があります。

通常価格9,800円から50%OFFという表示はどう考えますか?

ここは少し慎重に確認します。

今回、会社は、

「通常価格9,800円」

と表示していました。

しかし過去6か月の販売を確認すると、9,800円で購入していた顧客は約3%。

大半は初回割引、定期購入、クーポン価格で購入しています。

ここで考えるべきなのは、

9,800円が本当に比較対象となる「通常価格」として説明できるのか

という点です。

自社で形式的に価格を設定しておけば、常にそこから50%OFFと表示できる、という考え方では危険です。

実際の販売履歴を確認する必要があります。

「95%の人が定期コースを選んでいる」という表示はどう判断しますか?

マーケティングでは数字が非常に強い訴求になります。

「95%が選んでいます」

と表示されれば、消費者は、

「ほとんどの人はこちらを選んでいる」

と考えるでしょう。

しかし今回、実際の定期選択率は約72%でした。

担当者は、

「LPを最後まで見た人を母数にすれば95%に近い」

と説明しています。

私は、こういう数字については、

  • 母数は誰か
  • 期間はいつか
  • どの購入者を除外したか
  • 消費者が表示から何を理解するか

を確認します。

数字自体が計算上存在していても、一般的な消費者が受ける印象と違えば問題が残ります。

定期購入は申込ボタンだけ見ればよいのでしょうか?

いいえ。

今回の申込ボタンは、

「今すぐ半額で試す」

という表示でした。

しかし実際には、2回目以降8,800円の定期購入です。

もちろん画面のどこかには、

「2回目以降8,800円。いつでも解約可能」

と記載されています。

問題は、消費者が申込みを確定するまでに、

「これは定期購入で、今後いくら支払うのか」

を明確に理解できる設計になっているかです。

私はLPだけではなく、カート、確認画面、注文確定ボタンまで一連で確認します。

「いつでも解約可能」なら問題はないのでしょうか?

これも表示だけで判断しません。

今回、解約は電話受付のみ。

受付時間は平日10時から17時でした。

制度上は「いつでも解約可能」でも、実際には、

「仕事をしている人には電話しにくい」

「つながらない」

という状態なら、顧客体験は大きく変わります。

私は、マーケティング法務を見るとき、契約前の広告だけでなく、

解約時の顧客体験まで含めて販売設計

を確認します。

売上が落ちても表示を全部外すべきですか?

私は、最初からLP全部を壊す必要はないと考えます。

例えば、

「本日限り」

「架空の残り個数」

「リセットされるタイマー」

のように、実態と明確に違うものは優先的に止めます。

一方、

価格訴求や定期購入自体を止める必要はありません。

根拠を確認し、消費者が正しく理解できる表示へ変えればよい。

マーケティング法務とは、売れる表現を全部禁止する仕事ではありません。

説明できない売り方と、説明できる売り方を分けることです。

なぜCVRだけで判断してはいけないのでしょうか?

今回、マーケティング部は、

「本日限りを外すとCVRが25%落ちる」

と説明しています。

確かに重要な数字です。

しかしCS部では、解約時のクレーム率が半年で約1.7倍になっていました。

つまり、購入画面で高めたCVRの代償を、CSが後から支払っている可能性があります。

私は少なくとも、次の数字を同時に見ます。

指標 見る理由
CVR 購入率
CPA 顧客獲得コスト
解約率 販売後の不満を把握
返金率 販売品質を確認
クレーム率 誤認や期待値のずれを把握
定期継続率 長期的な顧客満足を確認
LTV 短期売上ではなく顧客価値を確認
SNSネガティブ投稿 ブランド毀損の兆候

年間2億円の小売商談はどう考えるべきですか?

今回、会社は大手ドラッグストアとの年間約2億円の商談を進めています。

相手からは、EC上の販売表示も審査すると言われています。

ここで重要なのは、LPが消費者だけに見られているわけではないことです。

取引先、金融機関、採用候補者、メディアも見ます。

短期的に月8,000万円を作るLPが、長期的な流通拡大を邪魔することもあります。

マーケティング表示は、営業資料でもあり、会社の信用情報でもあります。

広告代理店を変えれば問題は解決しますか?

私は、それだけでは解決しないと考えます。

代理店は確かに、

「期限を見せるとCVRが上がる」

と提案しました。

しかし会社も売上増加を評価し、成功事例として運用を続けています。

つまり、

「CVRが上がればよい」

という会社側の評価制度も問題を増幅しています。

代理店を切っても、同じKPIのままなら別の代理店が同じ提案をする可能性があります。

私ならどの順番で立て直しますか?


現行LP・過去LPを保存する
↓
価格・販売・在庫・定期率の根拠を集める
↓
表示ごとに根拠を確認する
↓
実態と明確に違う表示を即時停止する
↓
二重価格を販売実績から再確認する
↓
定期購入の最終確認画面まで点検する
↓
CSの解約・返金・クレームデータを確認する
↓
新LPでABテストする
↓
小売企業にも説明できる状態を作る
↓
CVR偏重のKPIを変更する

経営者が最後に確認すべき質問は何ですか?

私は、このようなEC表示の問題では、経営者にこう聞きます。

「この表示を、そのまま顧客と取引先の担当者の前で説明できますか?」

「本日限りと言っていますが、実は明日も同じです」

「残り47個ですが、実在庫とは関係ありません」

と説明できないなら、表示を見直す必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q1.「本日限り」を毎日表示してはいけませんか?

実際には翌日以降も同じ条件が継続するのであれば、消費者が「今日だけの条件」と受け取る表示との間にずれが生じます。実際の販売条件との一致を確認する必要があります。

Q2.カウントダウンタイマー自体は禁止ですか?

タイマー自体が問題なのではなく、表示された期限と実際の販売期限が一致しているかが重要です。再訪するたびにリセットされ、実際には終了しないのであれば慎重な見直しが必要です。

Q3.通常価格を自社で設定していれば50%OFFと表示できますか?

単に社内で価格を決めただけではなく、比較対象となる価格が実際の販売実態から説明できるかを確認する必要があります。

Q4.定期購入なら「初回半額」を強調してはいけませんか?

初回価格を訴求すること自体と、定期購入であることや2回目以降の価格を分かりにくくすることは別です。申込み全体として消費者が契約条件を理解できる必要があります。

Q5.「いつでも解約可能」と書いていれば十分ですか?

解約方法、受付時間、手続のしやすさなども確認した方がよいでしょう。表示上は解約可能でも、実質的に解約しにくければ顧客不満やクレームにつながります。

Q6.コンプライアンス対応でCVRが下がったらどうすればよいですか?

CVRだけで判断せず、解約率、返金率、クレーム率、定期継続率、LTVなどを同時に確認します。短期CVRが少し下がっても、長期利益やブランドが改善することがあります。

まとめ|問題は「本日限り」という言葉だけではありません

ECサイトで「本日限り」「残り○個」「あと20分」などの表示を使っている場合、私はまず、その表示が実際の販売条件と一致しているかを確認します。

実態と明確に違うものは優先的に止めます。

二重価格については販売実績を確認します。

定期購入については最終確認画面まで見ます。

そして、CVRだけではなく、解約率、クレーム率、LTV、ブランドへの影響まで確認します。

この問題の本質は、「どんな言葉なら使えるか」ではありません。

顧客を誤認させたり急がせたりしなくても、買ってもらえるマーケティングを作れるかです。

私は、これがEC・通販におけるマーケティング法務の基本的な考え方だと考えます。


この記事を書いた人

弁護士 宮本 真志

マーケティング法務、景品表示法、特定商取引法、EC・通販、広告表示、企業法務を取り扱う弁護士。

広告表現の適法性だけではなく、CVR、LTV、解約率、ブランド、広告代理店管理、社内KPIまで含め、「企業としてどこまで攻め、どこで止めるべきか」という経営判断の観点からマーケティング上の問題を検討しています。


※本記事は、ECサイトの価格表示、期間限定表示、在庫表示、カウントダウン、二重価格、定期購入等について、一般的な経営判断の考え方を整理したものです。個別の表示が法令違反に該当するかは、実際の販売価格、販売期間、在庫、申込画面、解約条件その他の具体的事情によって異なります。

丸の内経営法律事務所

丸の内経営法律事務所は、企業法務を得意とする名古屋市の弁護士事務所です。これまでに関わった中小企業のトラブル解決数は 200件 以上となります。「関わった人全てを豊かにする」を企業理念に、名古屋市をはじめ東海エリアの中小企業を法務面・経営面から多角的にサポート。顧問弁護士として労働問題解消や契約書作成など、企業のトラブルを未然に防ぐリーガルリスクマネジメントにも尽力します。

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